共働きの子育ては「辛い」、「しんどい」という声はよく聞きます。物理的にやることが多くなるので、忙しさに関しては基本的に同意が得られと思います。では、共働き×子育て不幸せなのでしょうか。というと、それとも違うようです。
本記事では、共働き子育ての幸福度の要因をデータから示していきたいと思います。
目次
共働き子育ての幸福の鍵は端的に言うと「夫婦が家庭でそれぞれに楽しめている状況」といえます。具体的には趣味でも仕事でも家事育児以外に打ち込めるものがあり、かつ、共に家事育児を担っているという状況です。妻の働き方の違いは家族の幸福度にほとんど影響がありません。
人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されているとする心理学理論があります。アメリカの心理学者マズローが考案したこの「マズローの欲求五段階説」では、人間の欲求には「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5段階があるとされています。
この欲求には階層があり、低次の欲求が満たされると次の1つ上の欲求をもつようになるというものです。
これを共働きの子育て世帯に当てはめてみます。
生理的欲求や安全の欲求(共働きver)などは、子どもが乳幼児の頃はなかなか達成できないかもしれません。しかしそこを二人で頑張ったという意識があると、その欲求が時間とともに満たされた後への移行やステップアップがスムーズです。
家庭への寄与度が互いに高く、趣味やその他余暇を楽しむ余裕のある夫婦は、夫婦の情緒関係が安定しており、円満に過ごしている傾向にあるとのデータがあります。
結婚している夫婦です、仲が悪くなりたいという人は殆どいないと思います。(もしいたらそれは別の問題によるものでしょう)
その1点をとってみても、これまで家事育児を担っていない側が家庭に注力する理由になると考えます。また、互いに家庭を基軸に置いている夫婦は対等に要求しあえるという結果もみえてきます。自分の意見を言えて相手も意見を言える健全な関係性が築けるということです。
子育てをしていくうえで”家族”には様々な問題が発生します。これは共働きであるかないかは本質ではなく、単に「大人が複数いる子育て中の世帯」という中で発生する問題です。ただ、共働きである場合はその問題の程度が強くなるものもあると考えます。
仕事と家庭のバランス
子どもの世話と家事
“家族”の範囲の問題
夫婦としての関係性
どのおうちでも大なり小なり悩む仕事と家庭のバランス。
子どもが生まれると、家の中のタスクそのものに変化が発生して、さらに葛藤が強くなる傾向があります。
共働き家庭において最も解決困難な葛藤かもしれません。
共働きじゃないとやっていけない?!【家事育児はどうする?】
どの課題も正解の存在しない課題であることが大変です。一つ一つ我が家に合った方法を試行錯誤していかなければならないのはかなり労力のいる作業です。
専業主婦と仕事一辺倒という伝統的性別役割観を夫婦が互いに納得している世帯では、この問題は表面化しにくいかもしれません。しかし、この課題はとくに乳幼児期において基本的には子育てを担う側の負担が大きくなりがちであることは子育てを主体に行ったかたにはご納得いただけると思います。ただ、その点に関しては夫婦が納得していれば何の問題もないのです。
問題となるのは夫も妻も家事と仕事と子育てを分担しているときにだれがどのタイミングで何をやるのかを巡って夫婦が一致しないことが起こりうることです。
これも一つ一つ試行錯誤していかなければならないので大変です。
子どもが誕生すると、私たちは親になり、私たちの親は祖父母になります。子どもを基準に見たときに祖父母という血縁的に比較的近しい親族が発生することも問題の一つとなる場合があります。
今共働き世帯が増えている現状は、ちょうどその立ち位置や役割などの過渡期といえるでしょう。つまり祖父母世代とは考え方が異なっている場合が多くあります。もちろん、大きな支えとなる場合もありますが、祖父母が孫フィーバーになって子育てに関して過剰に介入してくる事例も複数見聞きしています。それまで平気だったのに子どもが誕生してから急に距離感がわからなくなってしまう事例もあります。
解決(やり過ごす)のコツは、自分は常にパートナーの味方をすることです。子どもの誕生後でただでさえ環境の変化が著しい時期に距離感を再考するなど大変だとは思いますが、やるしかないです。やるしかないことが目白押しで嫌になりますね。
多かれ少なかれ発生する上記のような課題やストレスに対処して夫婦としての関係性も多少なりとも変化せざるを得ないでしょう。このような課題を解決していくために心身ともに疲弊してしまうため、夫婦としての親密な関係性を思い出すのは大変だと思います。そこにずれが生じてしまうと課題の解決にも暗雲が立ち込めるという負のスパイラルに入ってしまう場合もあります。
参考文献:中釜洋子, 他. 家族心理学[第二版].有斐閣. 2019.
母親が就業中の子どもは、78.1%が「父母共に仕事をしているほうがいい」とポジティブに考えているという結果がでています。逆に母親が仕事をしていない家庭の子どもは、29.4%が「仕事をしてほしい」と思うと回答しています。
また、「仕事をすることで母親が疲れていると思うか」という質問については、実際仕事をしている場合でもしていない場合でもその割合は高く、子どもが母親を心配している様子がうかがえます。
親自身の一番不安におもうことは「子どもがさみしい思いをしているのではないか」という所だと思います。実際子ども自身が「さみしい思いをしている」と思うと回答した割合は10.6%であり、この研究からは大半がさみしい思いをしているとは感じていないという結果がでています。
周囲や親自身が思うよりも、子どもは母親の就労をポジティブに考えていることがうかがえます。もちろん子どもの性格や、家庭の状況によって変わってくるものもあると思いますが、もしもフルタイムで働くことのブレーキが家族や子どもへの影響だというのであれば、それは杞憂かもしれません。
参考文献:永井暁子, 他.女性就業増加と子ども・家庭生活への影響. 家計経済研究.2017, 114, 1-11.
我が家は共働きですし、この形が最良だとおもって生活しています。データ上共働きであることが子供や家族全体に不利益をもたらすことはないようです。
ただ、それがすべての夫婦にとって最適であるかどうかはわかりません。子育ての分担・家事の分担・家計の分担…それぞれについて当事者たちが納得しているかどうかが重要です。加えて互いが支えになっていればなおよしです。
月並みですが、それが共働き夫婦の幸せ鍵への近道だと考えます。