なぜ夫は家事育児をしないのか

なぜ夫は家事育児をしないのか

共働き×子育ては忙しさ故に大変ですが、夫婦の関係性を見直すよい機会でもあります。子どもの誕生によって明らかに状況が変わり、否が応でも変化しないといけないからです。
本記事では、夫がなぜ家事育児をしないのか、夫が主体的に家事育児を担うようになるためにどうしたらよいのかをデータと我が家の経験から示していきたいと思います。

夫はなぜ家事育児をしないのか

妻が正社員であると家事分担が平等化し、学歴差や所得差が少なくなるほど家事分担が平等化するというデータがあります。

共働き世帯における家事育児分担の規定要因
参考文献:平井太規. 家族形成期の共働き世帯における夫の家事・育児分担とその規定要因. 統計学, 2019, 116.

学歴差や所得差が少なくなるほど家事分担が平等化するというのを「相対的資源仮説」といいます。しかし、正規雇用か否か・所得差があるか否かだけだと、産休や育休の取得やそもそもの賃金体系によって不利益を被りやすい女性が不利です。それだけではない要因もあると考えられて見出されたのが時間的制約の少ない方が家事を行うという「時間的制約仮説」です。物理的に家事育児に関わる時間があるかないかですので、わかりやすいですね。これも、夫の週労働通勤時間が長い方が家事育児をできていないというデータが示されているので、平均的にそうなるだろうことがわかります。

このデータによると、夫が家事育児をできないのは

  • 長時間労働になってしまっている
  • 共働きであることの意識が希薄
  • パートナーとの所得差
  • パートナーが正社員であるか否か

が鍵となっている可能性がみえてきます。

夫婦が直面する家族間の課題

子育てをしていくうえで”家族”には様々な問題が発生します。これは共働きであるかないかは本質ではなく、単に「大人が複数いる子育て中の世帯」という中で発生する問題です。ただ、共働きである場合はその問題の程度が強くなるものもあれば弱くなるものもあると考えます。

仕事と家庭のバランス
子どもの世話と家事
“家族”の範囲の問題
夫婦としての関係性

それぞれの項目に関する詳細はこちらから

共働きの幸福度 データから見る共働き子育て

夫と妻の家事・育児時間

実は1990年代後半には専業主婦世帯数よりも共働き世帯数が上回っているのです。しかし、2017年現在でも6歳未満の子のいる共働き夫婦において妻の週平均家事関連時間が6 時間5 分であるのに対し夫は1 時間22 分に過ぎません。

1996年の38分と比べるとだいぶ進歩はしているものの、平均的に妻の家事関連負担が大きいと考えられます。しかしやっと、我が家を含めて逆転している家庭も身近に存在するようになってきましたので、これも過渡期でしょうね。

厚生労働省
出典:厚生労働省. 雇用均等・児童家庭局

最近も1999年に厚労省が作成した広告が話題になりました。色々紛糾はしていますが、育児をしない人を親とは呼ばないのは、普通なんじゃないかと思います。生物学上の父とか生物学上の母とかになるのではないでしょうか。

参考文献:久保桂子. 共働き夫婦の家事・育児分担の実態.日本労働研究雑誌 ,2017, 689, 17-27.

夫が家事育児に参加するために

可能な範囲で家事育児をできない状況を作っている要因を排除していけばよいということです。

夫に家事育児をさせる

共に家事育児を担う

その人の要領の良さにもよりますが、これまで一人暮らしをした経験がなく、実家でも家事をしたことがない人に「じゃあ家事をやってね」といっても中々難しいものがあるかもしれません。人によってはある程度教えなければいけない状況も出てくるでしょう。

ある程度教えたら戦力として数えてしまい、自分が家事を担わなければ家庭が回らない状況をつくるのがおすすめです。名のある家事(掃除・洗濯など)は全て任せてしまい、名もない家事や手が回っていなさそうな所のみ目端が利く方がやるという形にすると比較的ストレスが少ないのではないかと思います。

また、育児については一人目の子どもの場合お互いに新入社員なので、やるしかないです。夫がやらなければ外部の力を借りてでもやらせないといけないと考えます。

その過程でストレスが溜まったり不和が生まれるかもしれません。我が家も上の子が1歳までは度々衝突していました。子どもが大きくなるにつれて子育てに慣れてきて互いに負担が減り、今は互いに育児主体者ができています。

家事・育児は抱え込まない

これまで主体的に行ってきた業務をそのまま丸投げするのは難しいものがあります。妻が家庭内労働の責任を放棄できずに夫に家事育児を任せられないと感じているという報告もあります。(一般論です)


妻が就業している場合、この放棄できないという現象は少なくなるそうです。絶対的に時間がなくなるので、放棄せざるを得ない状況になるからでしょう。また、積極的に「頼む」ことも重要です。

妻の年収を上げる

妻の年収が高くて就業時間がある程度長く、夫の就業時間が相対的に短いまたは同じであると夫の家事育児時間は増えるようです。

家事のゲートキーピング
引用文献:中川まり. 共働きの妻における家事のゲートキーピングと夫の家事参加との関連性. 日本家政学会誌. 2018, 69(12), 789-798.

妻が家事育児に関して不満を抱く隙もないという荒療治ではありますが、フルタイム共働き世帯はおそらくこの状況であると考えます。

自由になるお金が増えると家事代行などの選択肢の幅も広がりますし。家事育児の負担+フルタイムの負担だとかなり怖いですが、今まで家事育児を担っていない側に担ってもらうきっかけになり、6:4~5:5まで行けるかもしれないと思えば仕事に勤しみたくなります。

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我が家は夫が家事育児主体者

我が家の“夫”が帰宅するのは週に3回は16:00~18:00、週に3回は21:00以降。16:00~18:00に帰宅するときは片手に上の子、片手に買い物袋を持っています。そのあと忙しく料理をして、子どもにご飯を食べさせ、“妻”が帰宅する前後には子どもとお風呂に入っています。先に子どもと寝ていることもしばしば。

とはいえ結婚当初は妻が多くの家事育児を担っていました。その当時大学院生で、ある程度自由になる時間があったことも理由の一つです。今考えれば妻の年収が少なかったことも要因としてはあげられるのかもしれません。

その現状から妻の就職が決まり、収入がほぼ同一なんなら妻のほうが多いかもしれないという状況になり、夫がやらなければ家事育児が一切回らない現状が見えてきたことで「やるしかない」となりました。その過程には多少喧嘩や不和、私(夫)の家出もありましたが、結婚から数年以内の夫婦で生活環境が大きく変わったのだから多少の喧嘩はある程度仕方ないものと思っています。

今、我が家は妻が主に家計を支えています。妻も細かい家事やトイレ・風呂掃除など毎日しなくていい家事を積極的に担ってくれています。家の経済的な部分を半分以上担ってもらっている夫はラッキーなのでしょうか。家事の半分以上を担ってもらっている妻はラッキーなのでしょうか。単純に人間として平等なだけです。

うちの子は、父親が家事育児をしていることを普通に思って過ごしています。食べたいものがあるときは父親に言いに来ます。父親が掃除機とモップをしている姿をみていて、ホットクックで肉じゃがを作っている姿を見ているからです。母親は家にいない時は仕事をしていて、家にいてもパソコンの前にいる時は仕事中です。
両親揃って台所にたって料理をしている姿をみてもいますし、自分が保育園に行くときには父親も母親も仕事をしていると理解しています。

これが我が家の最適解です。

30代の夫が自分の夕食を作り、自分の洗濯物を干し、親として保育所と家を往復することはなんらラッキーではありません。30代の妻が自分の弁当を作り、仕事をしてお金を稼ぎ、親として子どもの病気の時に仕事を調整するのもラッキーではありません。ただ夫も妻も大の大人として普通であるだけです。

我が家のタイムスケジュールはこちらから

フルタイム共働きのスケジュール フルタイム共働き夫婦の家事・育児スケジュール【買い物する手間軽減】

共働きのウェルビーイング

ウェルビーイングとは、心安らぐ安定した生活環境で希望や夢への期待を持って生活できている状態のことを言います。では共働きが心安がぐ安定した生活環境を送るためにはどうしたらいいのでしょうか。ウェルビーイングを達成するには「ワーク・ライフ・バランス」「ワーク・ファミリー・コンフリクト」「ワーカホリズム」という考え方をとらえて、適切に対処していく必要があります。

ワーク・ライフ・バランス

ワーク・ライフ・バランス

ワーク・ライフ・バランスは、仕事と生活の調和を意味します。仕事と生活のバランスがとれている豊かな生活を送るという考え方です。
この調和は自分自身にとってバランスがとれている状態であるので、50:50が正しいというわけではありません。世代やライフイベント、個人の状況によってバランスのとり方は変わります。

ワーク・ライフ・バランスの実現には、働く人がやりがいをもって働き、家庭生活においても育児や介護などの時間や自分の時間をもつことが可能な労働環境が必要です。

ワーク・ファミリー・コンフリクト

ワークファミリーコンフリクト


仕事と家庭を両立しようとする際に生じる葛藤をワーク・ファミリー・コンフリクトと呼びます。
仕事生活と家庭生活とをいかにバランスをとっていくのかという問題は、難しい問題です。この2つは時に対立し、同時発生してしまいます。このことが仕事の満足・家庭の満足・生活のゆとり・その他の様々なものにネガティブな影響を与えてしまっていることは想像しやすいでしょう。

このワーク・ファミリー・コンフリクトは、共働き子育て中の方は大なり小なり感じたことはあると思います。例えば子供が熱を出したときや、家庭内で問題が発生したとき、仕事での問題が発生したときなどに感じるではないかと思います。
ワーク・ファミリー・コンフリクトは、抑うつ感・不安感・職務不満足感・家庭不満足感・全般的な生活の不満足感に結びつくというデータもあります。

ワーカホリズム

ワーカホリズム

ワーカホリズムは強迫的に働く状態のことです。生活や家族そのほかを犠牲にしても仕事を優先しなくてはならないなど、仕事に追い立てられている状態といえます。仕事のことが頭から離れず疲れてしまっているひとは要注意です。
ワーカホリズムである人は仕事への熱量が高く、パフォーマンスが高い状態にあるといえます。会社にとっては大きな戦力でしょう。しかし、ワーカホリズムは中毒と名前がついているとおり長くは続きません。最終的に自分自身の心身の健康や家族などとの生活を害してしまう危険性があります。

このような状態は積極的に避けるべきでしょう。

もちろん、忙しくしていることが楽しい・仕事が楽しいというのであれば問題ありませんが、「心身に影響を及ぼしていないか」「生活が基盤になっているか」はたびたび顧みる必要があります。仕事のために生活しているのではなく、生活のために仕事をしている状態が本来であるはずだからです。

参考文献:島田恭子, 他. 未就学児を持つ共働きの夫婦におけるワーカホリズムとパートナーの精神的健康との関連:夫婦間コミュニケーションの媒介効果の検討. 行動医学研究. 2016. 22(2), 76-84.

まとめ

総論でいえば、親となったのではれば互いが全力で子育てに関わることが重要だと思います。ただ、それがすべての夫婦にとって最適であるかどうかはわかりません。子育ての分担・家事の分担・家計の分担…それぞれについて当事者たちが納得しているかどうかが重要です。加えて互いが支えになっていればなおよしです。月並みですが、それが共働き夫婦の幸せ鍵への近道だと考えます。

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